JISLaD The Japanese Information System of Land Deformation
GPS地盤変動情報 第4号
2016 / 11 / 1
この度の「鳥取県中部地震」で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
下記の画像をクリックすると、PDFファイルをダウンロードできます。
 本号は2016年10月21日14時7分ごろにに発生した鳥取県中部地震による地殻変動について報告する。 地震の規模はM6.6(暫定値)、震源の深さは11km(暫定値)。鳥取県の倉吉市、湯梨浜町、北栄町で 最大震度6弱を観測された。地震の前後の日解析結果を求め、さらに比較した地殻変動量を求めた。
  ・2016年10月20日
  ・2016年10月22日
 
 
1. 本震後の地殻変動 (水平及び上下成分の変位分布図の説明)
 
  地震後のGEONET点の変位を図1に示します。黄色の星印は震源の位置です。茶色の太線は、 地震直後の余震域から推定される地下の地震断層を示しています。断層の東側北部に位置する 羽合点(HAWAI)では、北北西に約7cm変位し、約2cm隆起しています。この地震では断層が左に 動いた(断層に向かって立っていた人から見て、断層の向こう側が左に動いた)ので、断層の 東側の北端近くにある羽合点が北方向に動いて隆起したことは、断層の動きからも、つじつま が合っています。
  一方、断層を挟んで反対側の、断層の北西端に近い東伯の観測点(TOUHAKU)は、東南東 に約4cm動いています。断層の動きから考えると、南向きの動きが期待されますので、この点の 動きも、つじつまが合っています。また、この辺りは沈降しているはずなので、東伯観測点の 上下変動がほとんど見られないことも、あまり大きくは矛盾していません。
  さらに、断層の南西に位置する中和点(CHUKA)と八束点(YATSUKA)は、南南西にそれぞれ 約4cmと約2cm動いています。これも、左横ずれの断層運動と調和的です。また、断層の南西端は 隆起しているはずなので、中和の8mm程度の隆起も、そのような変動の影響を受けているのかも しれません。
  断層の南東の佐治(SAJI)・智頭(CHIZU)・加茂(KAMO)の各点はおおむね北西方向に、 断層の真東に位置する鹿野(SHIKANO)・鳥取(TOTTORI)の両点は北向きに、それぞれ動いて いて、これらも左横ずれの断層の動きから期待される変動です。
  最後に、東西に断層から遠い観測点は、変位量は小さいが、断層に近づくように、東側 では西向きに、西側では東向きに動いています。また、断層から南に遠い観測点は、断層から 遠ざかるようにわずかに南向きに動いています。今回の地震を生じさせた力は、東西方向に圧縮、 南北方向に伸びの力だったので、遠くの観測点の変位は、地殻に働いている力とだいたい向きに なっています。
図1:鳥取県付近の水平上下成分の変位
図1:鳥取県付近の水平上下成分の変位
 
 
2. 地震後の面積ひずみ分布 (面積ひずみ分布図の説明)
 
 この地震は、GEONET観測網の観測点の間隔に比べて、地震の規模が小さくて、電子基準点が 断層付近にあまりありません。このため、断層のすぐ近くでは、断層をまたいだ観測点を使って ひずみを求めなければならなくなり、ひずみは左横ずれの断層運動から期待されるような分布に なっていません。
 この地震を引き起こした地殻に働く力は、すでに紹介しましたように、東西に圧縮して、南北 に伸張しようとする力です。このために、地震発生前のこの地域のひずみは、東西方向に収縮、 南北方向に伸張でした。しかし、地震による断層運動でこのようなひずみが解消されたので、 地震時のひずみは、震源域から東西方向には、かなり遠くまで伸張を示す赤色、南北方向には、 北側は日本海なのでよくわからないのですが、南側はかなり遠くまで圧縮を示す青色になって います。
図2:鳥取県付近のひずみ分布
図2:鳥取県付近のひずみ分布
 
3. 本震後の基線長・面積変化 (基線長・面積変化図の説明)
 
 この地震では、断層直近の観測点が、羽合、東伯、中和、八束の各点の順番で、 大きな変位を示していますので、基線長や面積の変化は、これらの点による影響を大きく受けています。
 まず、断層をまたいで赤くなっている2つの三角形とそれらの辺である基線では、羽合の北北西方向への動きと、 中和・八束の南南西方向への動きのために、面積の増大と基線長の伸長を示しています。
 断層北西の三角形は、東伯の三角形を押しつぶすような東南東への変位で収縮しています。断層の南西の3つの 三角形とそれらの辺である基線は、中和・八束の変動が大きいために、面積の収縮と基線の短縮を示しています。
 
図3:鳥取県付近の異常基線長・面積変化
図3:鳥取県付近の異常基線長・面積変化
図3の凡例
 
 
<開発者のひとりごと>
 
 2016年10月に発生した鳥取県中部の地震は、今年発生した2つ目の被害地震です。熊本、鳥取とどこででも 地震は起こるものだと、びっくりされている方も多いと思います。実際、地震は日本にいる限り、どこででも起 こりうるのは事実です。しかし、兵庫県から島根県に至る日本海側で発生した過去の地震を調べてみると、ある 程度の規則性が見えてきます。
 図は、歴史的にこの地域で発生した大地震の位置を、今回の地震とともに示したものです。ここで、今回の地 震と同じマグニチュード6クラスの地震は、歴史的にも明治以降も起こっているのですが、省略しています。ま た、平安時代に発生した出雲地震については、古い歴史地震なので、地震の規模も震央の位置も、多少不正確か もしれません。
歴史地震
 この図を見ると、いくつかの規則性があることに気が付きます。一つは地震の規模で、大地震といっても、だ いたいマグニチュードは7.2前後で、マグニチュード8クラスの巨大地震は起こっていません。次に880年の出 雲地震だけが1000年以上前の地震だということを考慮すると、西から東に、だいたい同じような緯度で、同じ ような間隔で並んでいます。
 日本の内陸の活断層で発生する地震の多くは、短いものでも2000年とか3000年といった発生間隔だといわ れています。平安時代に発生した出雲地震は、鳥取県中部地震と近いようですが、鳥取県中部地震より約1100 年前に発生していることを考えると、この地域の一回前の大地震と考えるにはむずかしいかもれません。
 つまり、今回の鳥取県中部地震は、最近大地震が発生した場所のあいだの、大地震が発生していなかったとこ ろで発生したようです。一方、地震のマグニチュードは、地震で生じるエネルギーの対数と比例しているので、 過去の大地震と比べると約0.6程度小さい今回の地震で発生したエネルギーは、約8分の1でしかありません。 このため、ほぼ同じ場所で比較的近い将来に今回と同規模かもっと大きい地震が発生したとしても、専門家は あまり驚かないでしょう。
 このように、日本列島の内陸の活断層で発生する大地震は、比較的最近起こった大地震の空白域で発生してい ます。しかし、たかだか2000年程度しかない日本の歴史では、日本列島に空白域が非常にたくさんあり、どの 空白域に近い将来に大地震の発生が切迫しているのかを判断することは困難です。今回の鳥取県中部の地震につ いて、専門家は起こっても不思議ではない場所に発生したことは十分納得できますが、地震発生前にこの地域が マークできていたわけではありません。
 
 
 
ホームページ:  JISLaD
発行:  株式会社日豊